一般にシナモンとして知られ、古代エジプト以来の香辛料です。この香りはさわやかで京都の名菓「八つ橋」でもおなじみのものです。
ところが、中国では大昔から、薬用として用いられ、漢方原典の代表である『傷寒論』の最初にみられる生薬で、多くの漢方処方中に配合されています。薬効の幅が広く、免疫力を回復させたり、胃腸の機能を整えたり、血液循環を改善する作用があります。しかし、一方では桂皮は強壮・強精薬として欠くことのできない生薬でもあるのです。「腎陽の不足」「命門火衰」「陽萎」の名薬として用いられ、鹿茸、熟地黄、山茱萸(サンシュユ)とよく配合されます。
すなわち、桂皮の中の芳香成分である桂アルデヒドがそれらの作用の本体ですし、さらに、桂皮には、かむとピリッとくる辛烈な味があり、おもわず顔がカッとして、血液が流れたという感じをもたらしてくれます。
この作用が全身に及んで諸機能が回復するものと考えられます。
駆
血生薬の牡丹皮(ボタンピ)とペアで用いられ、肩こり、腰痛症にも応用されます。また当帰(トウキ)とペアで用いられるとさらに血行が改善され、冷え症にも用いられる処方ができあがります。
中国の広西(かんしー)省の南部や広東(かんとん)省の西南部の山脈に自生する熱帯樹木ですが、今では需要が多いためほとんどが栽培品です。その木の樹皮のみを薬用にします。
「中国強壮生薬の話」(株式会社 世界保健通信社)より